小石川の桜並木の花の下

焼津駅の南側を小石川って川が流れているんだけど、そこの桜並木の話をするよ。

小石川の水門と桜並木

小石川は現在は大井川用水の一部となっており、藤枝市末広の柳久保頭首工で栃山川から分かれ、東海道本線におおむね沿って東進し、焼津駅南で焼津港へと注ぎ込む。長年、田畑に用水を運んできた本河川は、現在では市街地に降った雨水の受け入れ先としても重要な役割を担っている。

まぁそんなことはどうでもよくて、すでにシーズン過ぎてしまった桜の話だ。

焼津市内では、小石川沿いにずっと桜並木が続いている。特に焼津西小学校前の500mほどの区間は並木の下に遊歩道が敷かれていて、花の時期になると散策に訪れる人で賑わう。地元ではちょっと知られた桜の名所だ。

西小前の小石川堤桜並木

立派な大木が並ぶ西小前の桜並木だが、整備されたのは戦後のことだそうで、現地にある看板によると焼津ライオンズクラブが昭和47年(1972年)5月14日に焼津市制20周年を記念して植樹したものらしい*1。現在はそれから45年が経っている。ということは、焼津市はもう間もなく市制施行70周年か。

『焼津北区と氏神様』*2によると、小石川は明治時代の資料には黒石川という名で記されており、地元では大川とも呼んでいたそうだ。当時はまだ焼津港もなく、自然の砂浜が広がる海岸で小石川と瀬戸川と堀川*3とが合流していた。焼津港築港が本格化したのは戦後のことなのだ。

んで、まだ港がなかった当時、小石川には桜並木があった。もちろん戦後生まれの西小前の桜並木のことではない。今の焼津駅前商店街のめがね橋から下流、旧150号*4あたりにかけてのことだったらしい。

現在の焼津駅前小石川の桜

聞いた話なのだが*5、昔、この駅前の桜並木の下に、屋形船が出たのだそうな。花に覆われた小石川に船を浮かべ、盛大な宴会を催おしたのだという。芸者衆も呼んでそれは賑やかだったという話だったが、話者はどう見ても戦後生まれであり、本人がその宴に参加していたわけではないと思う。

『焼津北区と氏神様』に、その桜並木の写真が載っている。小石川は今より川幅が狭くそれほど深くもなさそうだが、舟を運んできて浮かべておく程度ならばできただろうか。駅前商店街で桜祭りを開催していたそうで、当時大いに栄えていた焼津のことだからさぞ賑わっただろう。

同書によれば、駅前の桜並木は戦後すぐに枯れてしまったという。同じあたりに今も数本の桜が植わっているが、これは戦前の生き残りなのか、それとも戦後新たに植えたものなのか。現在の小石川は屋形船を出すにはやや寂しいし、水もきれいではない。とはいえ、時期になれば私の目を楽しませてくれる桜ではあるのだ。

*1:焼津市発足は昭和26年(1951年)3月1日。

*2:瀧利郎編『焼津北区と氏神さま』1981年

*3:黒石川支流、江川ともいう。

*4:旧国道150号、現県道416号。現在の橋は昭和26年(1951年)竣工の八雲橋。

*5:もう10年ほども前、美容院でたまたま隣に座ったおばちゃんが話しているのを聞いた。