うちのオカンの方向逆転現象

うちのオカンはよく道がわからなくなる。もうこの土地に20年住んでいるというのに、いまだに近所に出掛けて道に迷う。

オカンがいうには、方向感覚が逆転してしまうのだそうな。方向が分からなくなるのではなく、方角が逆になるというのだ。単なる方向音痴とは少し違うのかもしれない。

うちのオカンの方向感覚が逆転した地点

たとえば、出先の静岡から自宅がある焼津へ電車で戻るときに、逆方向の東へ向かって進んでいるような錯覚に陥ってしまう。もう数えきれないほど何度も乗った路線で、車窓に見慣れた風景が見えているにも関わらず、東西の感覚が逆転する。

たとえば、その公園は初めての場所だが、近くへはよく来ている。目の前に見える山や川は何度も訪れた場所だ。日常的に頻繁に渡る橋も少し離れたところに見えている。にもかかわらず、方向感覚が逆転してしまう。川の流れが見えているのに、海があるのは流れと逆方向のように感じる。山がいつもとは反対側にあるように感じる。

オカンがなぜ道に迷うのかというと、建物が密集していて見晴らしがよくない場所で、逆転した方向感覚に従って進んでしまうからのようだ。自宅近くのよく知っている場所に着けば感覚が戻る。普段は遠出しない人なので、道に迷っても適当にうろうろしていれば知っている場所には出られる。そうしてどうにか家に帰ってきているようだ。

なお、オカンは地図は読める。方向感覚が逆転していない状態なら、地図を頼りに目的地まで向かうことができる。全く初めての土地では、方向感覚が働かないぶん、逆に道に迷いにくいようだ。ちなみに、地図はヘッドアップ(進行方向が上)だそうだ。

問題は方向感覚が逆転してしまう点にあるわけだが、この現象はなぜ起こるのだろうか。現象の発生条件もよくわからず、見慣れたランドマークに囲まれている状況でも逆転するのはどういうわけなのだろう。方角がまったく不明になってしまうのではなく、あくまで逆になるだけというのも不思議だ。本人がいうには体調などとも特に関係はないそうだ。

自分にはそういう現象は全くないのでちょっと体験してみたくもあるが、実際にそうなったら結構な恐怖ではなかろうか。鏡の世界に迷い込んだようなものだ。オカン本人は慣れているのか平気な顔をしているが。それもまた不思議なところだ。

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